子どものためのスポーツ指導 ~子どもの心に寄り添い、真のパフォーマンスを引き出すために~
はじめに
カウンセラーの仕事の一端として、運動部に関わっています。さすがに、殴る蹴るといった行為はありませんが、明らかに、威嚇や人格否定的な発言には、さすがに、いかがなものかと注意を促しますが、残念なことに、改善する気配が見られません。どうも、従来の「罵声」や「叱責」など「厳しい指導」が子どものパフォーマンス向上に結びつくという考え方が、スポーツ指導には根強く残っていると言わざるを得ません。監督の中には「叱らなければ怠ける」という固定観念を持つ方も多く、勝利への情熱が時に個人攻撃や過剰なプレッシャーに繋がってしまう現実があります。
また指導者自身のストレスの発散方法として、怒声や罵声が使われることもしばしば見受けられます。
しかし、私は、子どもが自ら主体性を持って動き、メンタルトレーニングを通して内面から強くなるほうが、長期的には本番での発揮力を高め、チーム全体の勝利に寄与するのではないかと信じています。
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伝統と現状の問題点
日本のスポーツ指導の現場では、長い歴史の中で培われた「厳しい指導法」が今なお根強く残っています。監督は自らの勝ちたいという思いを前面に出すあまり、個々の選手を責め、代わりの存在をちらつかせることで選手たちに精神的なプレッシャーをかけることがしばしばです。こうした手法は、短期的には「やらせる」効果があったかもしれませんが、同時に子どもたちの心に傷を残し、自己肯定感の低下やメンタル不全につながるリスクを孕んでいます。結果として、本来発揮すべき潜在能力が抑え込まれてしまい、試合の大事な瞬間に力を発揮できなくなる恐れがあります。
またこうしたことが、日常的に行われることの子どもたちの「慣れ」にも問題が潜んでいます。打たれ強く、克己心が鍛えるための根底にあり、こうした「強くなければ価値がない」といった体育会系といわれる文化のもつ背景に潜む危うさや不健全性に心理師としてのざわつきは隠せません。
アスリートの3人に一人はメンタル不調を経験するという報告もあり、パワハラ問題も続出する中、スポーツにメンタルケアが欠かせないというのは世界の潮流となっています。にもかかわらず、日本の若年層へのスポーツ指導の在り方は、まだまだ非科学的な根性論の域を脱出できていないように見受けられます。
子どもの主体性とメンタルトレーニングの可能性
一方で、メンタルトレーニングという方法は、子ども自身が自己の可能性に気づき、自信をもって行動する力を育むものです。心理学的視点からすれば、子どもたちが「自分ごと」としてスポーツに取り組める環境は、単に技術を追求するだけでなく、精神面での成長にも大きな効果をもたらします。
たとえば、成功体験を積み重ね、失敗を恐れずにチャレンジする姿勢は、試合場での柔軟な思考や臨機応変な対応力を生み出します。叱責や個人攻撃に頼らず、ポジティブなフィードバックや具体的な目標設定を行うことで、選手は自らの内面に火をつけ、真の意味での「勝つ力」を獲得できるのです。

指導者へのアプローチと変革の試み
私自身、心理士として関わる中で、さりげなく監督に「叱責だけではなく、心のケアやポジティブな強化が必要ではないか」と進言してきました。しかし、コーチ側には「褒めるとつけあがる」「叱らないと怠ける」という古い観念が根付いているため、変化がなかなか訪れません。
そこで、具体的な提案としては、以下のようなアプローチが考えられます。
- フィードバックの多様化
元々、人は注目したところが増える傾向にあります。ミスを指摘すれば、ミスが増える傾向があります。失敗を責めるのではなく、うまくいった点を具体的に褒め、改善すべき点はできるだけ建設的な表現で指摘する。 - 自己評価と目標設定の導入
選手自身が日々の練習や試合を振り返り、次へのチャレンジポイントを見出すワークショップ形式やミーティングを取り入れる。 - メンタルトレーニングの実践
瞑想やイメージトレーニングなど、精神を整える具体的な方法を練習の一環として導入する。
こうした変革は一朝一夕には実現しませんが、選手の心と体の両面からの成長こそが、最終的には真の勝利に繋がることを信じて、現場に新たな風を送ることが必要です。
真の勝利とは何か
ここで問いたいのは、「勝つための手段」としての指導法と、「子どもの未来のための指導法」との違いです。
もちろん、結果を出すことは重要ですが、その先にあるのは選手たちが社会で生き抜く力、すなわち自己肯定感や柔軟性、そして共に成長する姿勢です。
勝利の裏に隠された本質は、単なるスコアや順位以上に、子どもたちが自分自身に誇りを持ち、成長し続ける環境をどう作るかにあると思います。こうした視点から、指導者こそが変わるべきであり、古い慣習にとらわれず、未来の選手たちにとって最良の方法を追求するべきだと感じます。
まとめ
本当の子どものためのスポーツ指導とは、ただ勝つために厳しく叱責するのではなく、子どもたちが自ら考え、行動する力を育む環境を作ることです。
心理士としての経験も、数多くの子どもたちがポジティブな指導の中で自信を取り戻し、大事な場面で最高のパフォーマンスを発揮していることを示しています。
もちろん、伝統や慣習を変えることは簡単ではありませんが、選手の将来や心の成長を考えれば、今こそ新しい指導方法を模索する時だと思います。
新たな指導法には、今までの「叱責中心」のアプローチに代わり、フィードバック、自己評価、そしてメンタルトレーニングを取り入れることが求められます。
本記事を通じて、監督をはじめとする指導者が、子どもたちの真の成長と輝く未来のために、科学的な根拠に基づいた、もっと柔軟で思いやりに満ちた指導へとシフトしてくれることを願ってやみません。
さらに考えるべきこと
この記事を読んでくださった指導者の皆さんや保護者の方々には、最新の心理学研究や実際の現場での取り組み事例にも目を向けていただきたいです。
たとえば、海外のスポーツ指導における成功事例や、ポジティブ心理学に基づくメンタルトレーニングプログラムは、日本の現場にも十分に応用可能なものが豊富にあります。
今後は、こういった知見を導入しつつ、選手一人ひとりの個性や可能性を尊重する「子ども主体」の指導法がさらに広まっていくことが、真に勝利へと近づく道だと信じています。

